社長、その溺愛は計算外です

圭佑さんは多くを語らなかったけれど、会うたびに彼の表情が少しずつ変わっていくのは感じていた。何かが、少しずつほどけていくように。

そして何より、もう誰かを演じる必要がなくなった。

圭佑さんの父親の圧力が消えた後、私はプロジェクトマネージャーとしての全権を取り戻し、以前にも増して重要な案件を任されるようになった。

KIRIHARA TECHも、田口さんや森田さんたちが奔走して新規クライアントを開拓し、契約を再開した取引先も三社に増えた。

仕事でも、プライベートでも、ありのままの自分でいられる。それが、どれほど幸せなことか。



「新谷さん、お疲れ様です」

定時を過ぎた頃、中島主任が声をかけてきた。

「最近、すごく雰囲気が明るくなりましたね。以前より、笑顔が増えた気がします」

「そうでしょうか」

「ええ。何か良いことでも?」

「はい。とても良いことがありました」

オフィスを出ると、エントランスに見慣れた姿があった。

「圭佑さん」

彼は、いつものスーツ姿で私を待っていた。私を見つけた瞬間、その顔がパッと明るくなる。
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