社長、その溺愛は計算外です
圭佑さんは多くを語らなかったけれど、会うたびに彼の表情が少しずつ変わっていくのは感じていた。何かが、少しずつほどけていくように。
そして何より、もう誰かを演じる必要がなくなった。
圭佑さんの父親の圧力が消えた後、私はプロジェクトマネージャーとしての全権を取り戻し、以前にも増して重要な案件を任されるようになった。
KIRIHARA TECHも、田口さんや森田さんたちが奔走して新規クライアントを開拓し、契約を再開した取引先も三社に増えた。
仕事でも、プライベートでも、ありのままの自分でいられる。それが、どれほど幸せなことか。
◇
「新谷さん、お疲れ様です」
定時を過ぎた頃、中島主任が声をかけてきた。
「最近、すごく雰囲気が明るくなりましたね。以前より、笑顔が増えた気がします」
「そうでしょうか」
「ええ。何か良いことでも?」
「はい。とても良いことがありました」
オフィスを出ると、エントランスに見慣れた姿があった。
「圭佑さん」
彼は、いつものスーツ姿で私を待っていた。私を見つけた瞬間、その顔がパッと明るくなる。