社長、その溺愛は計算外です
「してない」
「顔に出てますよ」
「……少し」
観念したように、圭佑さんが小さく答えた。その耳が、わずかに赤い。
「パクチーの時も思いましたけど」
「何が?」
「圭佑さん、正直すぎますよね。全部、顔に出る」
「うるさい」
「ふふ、可愛い」
「……梓、笑うな」
そう言って私を睨む視線さえ、今は少しも怖くない。
「笑ってませんったら」
「……嘘をつけ。口角が上がってる」
「バレました?」
繋いだ手から、彼の微かな動揺が伝わってくる。
圭佑さんが、私を強く引き寄せた。
「笑ってていい。その代わり……」
「その代わり?」
「今夜は、俺だけを見てろ」
その言葉に、鼓動が速まった。
婚活パーティーで出会った夜、エレベーターの中で「今夜から君は俺のものだ」と言ったのも、この人だった。
言葉は変わっても、変わらないものが確かにある。
この人は、ずっとこういう人だったんだ。
「今夜、君にゆっくり話したいことがある」
「話?」
「詳しくは、レストランで話す」
それだけ言って、彼は歩き出す。
秋の夜風が、二人の間を抜けていった。