社長、その溺愛は計算外です

その夜。家に帰った私は、春菜に電話をかけた。

「春菜、聞いて。圭佑さんのご両親に会うことになったの」

電話の向こうで、春菜が歓声を上げた。

『それって、結婚前提ってことよね!』

「まだ、はっきりとは……」

『梓、良かったね。本当に』

春菜の声が、心から嬉しそうだった。

『あなたが、ありのままの自分で愛される。それを見られて、あたしも幸せよ』

「ありがとう、春菜」

電話を切った後、私はしばらくスマホを胸に抱えていた。

ありのままの自分で愛される。

その言葉が、じわりと胸に広がった。



十一月下旬の日曜日。

私は、圭佑さんと共に桐原家を訪れた。

車で邸宅に向かう途中、私の手は緊張で冷たくなっていた。

「大丈夫」

圭佑さんが、私の手を両手で包み込んでくれる。

「俺がそばにいる」

その温もりに、少しだけ心が落ち着いた。

桐原家の門をくぐると、手入れの行き届いた日本庭園が広がっていた。

晩秋の庭園──楓の葉が、最後の紅を見せている。

あの高級レストランでの慣れた様子も、洗練されたイタリア語も──この庭園を見た瞬間、全てがつながった気がした。

でも、怖くなかった。圭佑さんが私の隣にいてくれるから。
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