社長、その溺愛は計算外です
その夜。家に帰った私は、春菜に電話をかけた。
「春菜、聞いて。圭佑さんのご両親に会うことになったの」
電話の向こうで、春菜が歓声を上げた。
『それって、結婚前提ってことよね!』
「まだ、はっきりとは……」
『梓、良かったね。本当に』
春菜の声が、心から嬉しそうだった。
『あなたが、ありのままの自分で愛される。それを見られて、あたしも幸せよ』
「ありがとう、春菜」
電話を切った後、私はしばらくスマホを胸に抱えていた。
ありのままの自分で愛される。
その言葉が、じわりと胸に広がった。
◇
十一月下旬の日曜日。
私は、圭佑さんと共に桐原家を訪れた。
車で邸宅に向かう途中、私の手は緊張で冷たくなっていた。
「大丈夫」
圭佑さんが、私の手を両手で包み込んでくれる。
「俺がそばにいる」
その温もりに、少しだけ心が落ち着いた。
桐原家の門をくぐると、手入れの行き届いた日本庭園が広がっていた。
晩秋の庭園──楓の葉が、最後の紅を見せている。
あの高級レストランでの慣れた様子も、洗練されたイタリア語も──この庭園を見た瞬間、全てがつながった気がした。
でも、怖くなかった。圭佑さんが私の隣にいてくれるから。