社長、その溺愛は計算外です
玄関では、着物姿の女性が出迎えてくれた。
圭佑さんの母親──桐原和子さんだ。淡い藤色の着物が、よくお似合いだ。
「圭佑、よく来たわね」
和子さんが、優しい笑みを向けてくれる。
「そして、あなたが新谷梓さんね。ようこそ、いらっしゃいました」
「初めまして、新谷梓と申します。本日は、お招きいただきありがとうございます」
緊張で、声が震えてしまった。
「まあ、そんなに緊張しないで。圭佑から、たくさんお話を聞いていますのよ」
その言葉に、私は圭佑さんを見た。彼は、目を逸らした。
応接間に通されると、そこには既に圭佑さんの父親、桐原隆一さんが座っていた。
「初めまして、新谷梓と申します。この度は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」
私は、深くお辞儀をした。
隆一さんは、じっと私を見ていた。その視線は品定めするようで、正直、怖かった。
それでも、私は目を逸らさなかった。
隆一さんが口を開こうとした瞬間、圭佑さんが私の隣に一歩寄った。それだけだった。
ただそれだけなのに、「この人は俺が守る」と言っているように思えた。
「新谷さん」
桐原会長が、口を開いた。