社長、その溺愛は計算外です
「君は、本当に圭佑を愛しているのか?」
「はい。心から愛しています」
私は、会長を見据えて答えた。
「圭佑は、会社も財産も捨てる覚悟だと言っていた。そんな息子と、共に生きていけるか」
「もちろんです」
声に、力が宿る。
「圭佑さんがたとえ何もかも失っても、彼と共に、一から築いていきます。それに……圭佑さんは、何も失っていないと思います」
「ほう?」
「彼には、二百十人の社員がいます。そして、私がいます」
私は、圭佑さんを見た。
「それは、どんな財産よりも価値があると思います」
「隆一、この子は本物よ」
和子さんが言った。
隆一さんが、しばらく黙って私たちを見ていた。
やがて、口元が緩んだ。
「梓さん」
呼び方が変わった。
認めてもらえた、と思った。この人に。
声が、一瞬だけ出なかった。
「圭佑には、KIRIHARA TECHを続けさせる。そして、桐原グループも継いでもらう。この一ヶ月、何度も話し合った結果だ」
圭佑さんが、頷いた。
良かった……圭佑さん、どちらも続けられるんだ。
「梓さん。息子は不器用な男だが、どうか支えてやってください」
「ありがとうございます。圭佑さんを、一生大切にします」
私は深く頭を下げた。