社長、その溺愛は計算外です
食事の時間、和子さんがそっと私の隣に座った。
「梓さん、お料理はお好きですか?」
緊張で料理にうまく手が伸びていなかった私に、和子さんが気づいたのだろうか。
「はい、好きです。ただ、あまり上手ではないのですが……」
「そんなことないわ。圭佑から聞いていますよ」
「え?」
「先日、梓さんが作ってくれたお弁当。とても美味しかったって、嬉しそうに話していたわ」
圭佑さんが「母さん……」と小さく呟いた。
「私も、普通の家庭の娘でした」
和子さんが、語り始めた。
「桐原家に嫁ぐ時、周りから反対されました。あの頃の私も、今のあなたと同じように緊張して、怖かった」
「和子さんも……」
「でも、この人が守ってくれた」
和子さんが、桐原会長……隆一さんを見た。隆一さんが、顔を少し赤らめながら咳払いをした。
「怖いと思える間は、大丈夫なの」
和子さんが、続けた。