社長、その溺愛は計算外です

「圭佑の隣に立つということは、この先も何度か、今日のような場に出ることになる。それが、重荷に感じることもあるかもしれない」

「……はい」

「それでも続けていけるか、というのを聞いておきたかった」

脅しでも、試練でもない。

ただ、父親として確認しておきたかった──そういう顔だった。

「続けていけます」

私は、はっきりと答えた。

「今日、ここに来てみて、そう思いました。怖くなかったわけじゃないです。でも、圭佑さんの隣に立ちたいという気持ちの方が、ずっと大きかった」

隆一さんが、庭に視線を戻した。

「……あの子を、頼みます」

「はい」

「会社のことではなく」

隆一さんが、続けた。

「あの子が、無理をしていたら──教えてやってくれ。あいつは、弱みを見せない。昔から」

「……そうします。必ず」

声が、少しだけ掠れた。

この人も、圭佑さんのことを、ずっと心配していたのだ。

やがて、圭佑さんが戻ってきた。

「何を話していたんですか?」

「内緒です」

私が答えると、隆一さんが、本当に小さく口元を緩めた。

圭佑さんが、私と父親を交互に見て、何か言いたそうな顔をした。

「……なんですか、その顔」

「別に」

「全然、別にじゃない顔してますよ」

隆一さんが、また口元を動かした。

圭佑さんが「父さんまで……」と苦笑する。

その横顔を見て、私は思った。

この家族の中に、少しずつ、入っていける気がする。



帰り道。タクシーの車内に、夕暮れの光が差し込んでいた。

「あの、圭佑さん」

「なに?」

「婚活パーティーで、『大切なものが見つかると直感した』って、言ってたじゃないですか」

「覚えていたのか」

「ずっと気になっていました。あれは、何のことだったんですか?」
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