社長、その溺愛は計算外です
「圭佑の隣に立つということは、この先も何度か、今日のような場に出ることになる。それが、重荷に感じることもあるかもしれない」
「……はい」
「それでも続けていけるか、というのを聞いておきたかった」
脅しでも、試練でもない。
ただ、父親として確認しておきたかった──そういう顔だった。
「続けていけます」
私は、はっきりと答えた。
「今日、ここに来てみて、そう思いました。怖くなかったわけじゃないです。でも、圭佑さんの隣に立ちたいという気持ちの方が、ずっと大きかった」
隆一さんが、庭に視線を戻した。
「……あの子を、頼みます」
「はい」
「会社のことではなく」
隆一さんが、続けた。
「あの子が、無理をしていたら──教えてやってくれ。あいつは、弱みを見せない。昔から」
「……そうします。必ず」
声が、少しだけ掠れた。
この人も、圭佑さんのことを、ずっと心配していたのだ。
やがて、圭佑さんが戻ってきた。
「何を話していたんですか?」
「内緒です」
私が答えると、隆一さんが、本当に小さく口元を緩めた。
圭佑さんが、私と父親を交互に見て、何か言いたそうな顔をした。
「……なんですか、その顔」
「別に」
「全然、別にじゃない顔してますよ」
隆一さんが、また口元を動かした。
圭佑さんが「父さんまで……」と苦笑する。
その横顔を見て、私は思った。
この家族の中に、少しずつ、入っていける気がする。
◇
帰り道。タクシーの車内に、夕暮れの光が差し込んでいた。
「あの、圭佑さん」
「なに?」
「婚活パーティーで、『大切なものが見つかると直感した』って、言ってたじゃないですか」
「覚えていたのか」
「ずっと気になっていました。あれは、何のことだったんですか?」