社長、その溺愛は計算外です

「はい」

私は即答した。

「……根拠は?」

「お父さん、それ圭佑さんと同じことを言ってる」

「何?」

「私がここへ来る電車の中で、圭佑さんが同じことを聞いたんです。『根拠は』って」

父が、圭佑さんを見た。

圭佑さんが、目を伏せた。

「……心配性なもので」

父が、ふっと息を漏らした。

笑ったのか、呆れたのか、よく分からない。けれど、それが父の笑い方だと、私は知っていた。

父の視線が、圭佑さんへ向いた。

「梓はな、弱音を吐かない。昔からだ」

「はい」

「だから気づきにくいが、無理をする子だ。その無理を、君は見抜けるか」

数秒、間があった。

「見抜けないことも、あると思います」

圭佑さんが、はっきりと言った。

「ですが、見逃したままにはしません。気づけなかった分だけ、向き合います。何度でも」

父が、息を吐いた。

「……不器用だな」

「よく言われます」

「だが、嘘は言っていない」

父がもう一度、私を見た。

「梓。お前は、ずっと一人で頑張ってきた。難しい仕事だと言いながら、一度も投げ出さなかったな」

「お父さん……」

「弱音を吐かなかったし、誰かに頼ることもしなかった。だが……」

父は、視線をわずかに逸らしてから続けた。
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