社長、その溺愛は計算外です

「梓。圭佑さんは、良い青年だ。きっとお前を、幸せにしてくれるだろう」

「はい。私も、彼を世界一幸せにするつもりです」

父が小さく笑った。

「お前は昔からそういう子だった。自分より相手のことを先に考える。さあ、梓の腕を貸してくれ」

父の腕に手を添えながら、私はその手のぬくもりをそっと感じた。この手に、これまでどれほど支えてもらってきたか。

「ありがとう、お父さん」

小さく呟くと、父は何も言わず、ただ静かに頷いた。

私たちは、チャペルへ向かった。



扉の前に立った時、中からオルガンの音が聞こえてきた。

「いくぞ」

父が小さく言った。

扉が開くと──目の前に広がるのは、愛する人たちの温かな眼差し。

母が、口元を覆いながら目を細めている。和子さんが、端正な着物姿でゆっくりと頷いてくれた。

圭佑さんのお姉さんと弟さんが並んで座っている。会社の同僚たち、KIRIHARA TECHの社員たち。

そして、一番後ろの席には、上品な装いの女性が座っていた。
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