社長、その溺愛は計算外です
「梓。圭佑さんは、良い青年だ。きっとお前を、幸せにしてくれるだろう」
「はい。私も、彼を世界一幸せにするつもりです」
父が小さく笑った。
「お前は昔からそういう子だった。自分より相手のことを先に考える。さあ、梓の腕を貸してくれ」
父の腕に手を添えながら、私はその手のぬくもりをそっと感じた。この手に、これまでどれほど支えてもらってきたか。
「ありがとう、お父さん」
小さく呟くと、父は何も言わず、ただ静かに頷いた。
私たちは、チャペルへ向かった。
◇
扉の前に立った時、中からオルガンの音が聞こえてきた。
「いくぞ」
父が小さく言った。
扉が開くと──目の前に広がるのは、愛する人たちの温かな眼差し。
母が、口元を覆いながら目を細めている。和子さんが、端正な着物姿でゆっくりと頷いてくれた。
圭佑さんのお姉さんと弟さんが並んで座っている。会社の同僚たち、KIRIHARA TECHの社員たち。
そして、一番後ろの席には、上品な装いの女性が座っていた。