社長、その溺愛は計算外です
牧師さんの前で、私たちは永遠の愛を誓った。
「病めるときも、健やかなるときも。新谷梓だけを、生涯愛し続けることを誓います」
確信に満ちた彼の声が、チャペルに響く。
私の声も重なった。
「私も、桐原圭佑さんだけを、生涯愛し続けることを誓います」
指輪の交換。圭佑さんが、私の指に結婚指輪をはめてくれた。
「これで、君は正真正銘、俺の妻だ」
「はい」
私は微笑んだ。
「それでは、誓いのキスを」
牧師さんの言葉に、圭佑さんが私のヴェールをそっと上げた。
そして、私たちは深く口づけを交わした。
沸き起こる拍手の中で、私はただ、彼の確かな体温だけを感じていた。
◇
挙式後。披露宴では、春菜のスピーチが始まった。
「梓は、ずっと居場所を探していました」
彼女の声が、会場に響く。
「仕事では完璧なプロジェクトマネージャーを演じ、婚活では理想の女性を装って。どこにも、本当の自分を出せないでいた」
会場が、しんと静まり返った。
「でも、桐原さんと出会って……梓は変わりました。もう演技は必要なくなった。だって、桐原さんも同じだったから」
春菜が続ける。
「完璧な社長の仮面の下に、誰かのそばで静かに息をしたかった一人の人間がいた。お互いに心の鎧を被っていた二人が、出会って、ぶつかって、愛し合って」
彼女の目に、涙が光る。
「これって、運命以外の何物でもないですよね」
会場から、温かな拍手が起こった。
私は隣の圭佑さんを見た。
彼もまた私を見ながら、ゆっくりと頷いていた。