社長、その溺愛は計算外です
披露宴も終盤に差しかかり、「デザートはぜひ、ガーデンでお楽しみください」という司会者のアナウンスとともに、私たちはチャペル併設のガーデンへ移動した。
初夏の夜風が、色とりどりのドレスをやさしく揺らしている。
開放的な空間では、ゲストたちがタルトやマカロンを手に談笑していた。
「最後に、ブーケトスのお時間です」
スタッフに促され、ゲストたちが笑いながら集まってくる。
私は、少し離れた場所で微笑んでいる麗華さんと目が合った。
「──いきます!」
感謝とエールを込めて、私は彼女のいる方へブーケを放った。
白い花束が、ライトアップされた夜空に美しい弧を描き、迷うことなく彼女の手の中へ吸い込まれていく。
「わあ……!」
歓声があがる。
驚きに目を見開いた麗華さんは、やがて柔らかく、清々しい笑顔を見せてくれた。
過去に縛られていた頃とは違う。自分で選んだ道を歩んでいる人の、落ち着いた強さがそこにあった。
「改めて、おめでとうございます、梓さん」
麗華さんが、私の手を握る。
「私も……いつか、本当に愛し合える人を見つけますね」
「麗華さんなら、絶対に見つかります」
私は彼女の手を強く握り返した。
あなたが来てくれて、良かった。その気持ちを込めて。
「その時は、必ず教えてください」
麗華さんが小さく頷いて、微笑んだ。その笑顔は、本物だった。
いつか、あの人にも、普通の恋が訪れますように。