社長、その溺愛は計算外です
披露宴が終わり、私たちはホテルのスイートルームで二人きりになった。
窓の外には、東京の夜景が広がっている。
無数の光が瞬いているのに、不思議と、私の世界はこの部屋の中だけにあった。
「……やっと、二人きりになれた」
背後から、圭佑さんの腕が回る。逃げ場を塞ぐようでいて、どこまでも優しい抱擁。
「長い一日でしたね」
「ああ。でも──」
彼が、私の額に唇を落とした。
「今夜からが、本番だ」
「圭佑さん……」
「梓」
低く、真剣な声だった。
「君を、もう二度と離さない。今夜から君は──俺だけのものだ」
婚活パーティーのエレベーターで聞いた、あの言葉。
あの時は逃げ場のない壁に追い詰められていたのに、今夜は──この腕の中が、一番安心できる場所だった。
圭佑さんが、私をそっと抱き寄せた。
独占欲の滲む瞳に射抜かれ、鼓動が速まる。
圭佑さんは私を軽々抱き上げ、ベッドルームへと運んでいく。重厚な扉が、外の世界を拒絶するようにゆっくりと閉まった。
彼は私をシーツの上に下ろすと、焦がれるような眼差しで見つめた。
「梓」
「はい……」
「君を、ずっと待っていた。この日を、どれほど夢見ていたか」
頬に添えられた指先が、微かに震えている。
完璧で、何事にも揺るがないはずの人が──私の前でだけ、こんなにも余裕を失っている。
その事実が、胸の中で静かに広がっていく。
「今日から君は、名実ともに俺の妻だ。もう、遠慮しなくていいんだよな?」
その言葉に、何かが決壊した。
これまでずっと、仕事に追われて、自分の居場所を探していた私が──今、確かにこの人に選ばれて、ここにいる。
こんなにも誰かに触れてほしいと思ったのは、初めてだと気づいた。
「はい……私も、同じ気持ちです」
自然と、言葉がこぼれた。
彼の手が、着替えたばかりのワンピースのファスナーにかけられる。