社長、その溺愛は計算外です
「KIRIHARA TECHが、上場に向けて動き出せることになった」
「本当ですか……! おめでとうございます」
「父に『実力で証明しろ』と言われてから、俺たちの力だけで必死に地盤を固めてきた。社員たちのおかげだ」
圭佑さんが、私の手を取った。
「それから──」
圭佑さんが、少し照れたような顔で続けた。
「梓、一つ確認したいことがある」
「何ですか?」
「結婚してから、俺の生産性が十二パーセント上がったんだが」
「……それは、喜んでいいんですか」
「梓がそばにいると、集中できる。データが証明している」
「あなたは本当に……」
「何だ?」
「そういうところが、好きです」
圭佑さんが、珍しく少し照れた顔をした。
「……梓」
「はい?」
「俺は君を愛しているのはもちろん、仕事に向き合う君のことも、心から尊敬している」
愛されながら、認められる。それが、どれほど嬉しいことか。
「ありがとうございます。私も、あなたのそういうところが、大好きです」
圭佑さんの表情が、柔らかく緩んだ。
「そういえば」
私は、思い出したように続けた。