社長、その溺愛は計算外です

「エレガンス・コレクションとの契約、先月から正式に再開したんです。今度は、私が主担当で」

あの時、悔しさに震えながらも、私は諦めずに別の案件で実績を積み上げてきた。その姿勢を、先方の役員が見ていてくれたのだ。

「……そうか」

圭佑さんが、私を見た。その目が、静かに細くなる。

「良かった」

短い一言だったが、その重さが伝わった。一度奪われた仕事が戻ってきたことの意味を、この人は誰より分かっている。

「圭佑さんのおかげです」

「違う」

彼が、首を横に振った。

「君が自分の足で、取り戻したんだ」

その言葉に、私は息を呑んだ。

「私ね、婚活パーティーの頃の自分に、言ってあげたいことがあるんです」

「何を?」

「仮面なんていらなかったよ、って」

圭佑さんが、口角を上げた。

「君は、真面目すぎるんじゃない。誠実なんだ。それは、君の一番の魅力だよ」

あのバーで言い合いになったあの夜が、蘇った。

『誠実さとスピードは、対立するものじゃない』

あの時、私たちは初めて正面からぶつかった。そして、初めてお互いの本質を見た。

「ねえ、圭佑さん。あの婚活パーティーで出会わなかったら、私たち……今こうしていなかったんですよね」

「そうだね」

圭佑さんが、私を見つめた。
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