社長、その溺愛は計算外です
IT業界向けのコンサルティングとシステム開発を手がける『株式会社フューチャーリンク』で、プロジェクトマネージャーとして働く私。
仕事では確固たる地位を築いている。けれど婚活の場では、その全てが裏目に出る。
『すごいですね。俺より稼いでるんじゃないですか?』
『PMなんてやってる女、無理だわ』
先週参加した婚活パーティーで、三人目の男性はそう言って席を立った。そして、二度と戻ってこなかった。
三十路が近づくにつれて、孤独が怖くなっていた。
仕事の充実感がどれほどあっても、夜、誰もいない部屋に帰るたびに、何かが欠けているような感覚がする。
だから今日は、戦略を立て直して臨んでいた。
パステルピンクのワンピースを纏い、ヘアアイロンでふんわりと巻いた髪。
知的なクールビューティという本性を隠し、「柔らかで守ってあげたくなる女性」という仮面を被った。
──と、受付で荷物を預けようとした瞬間、クロークの番号札を床に落とした。
拾おうとして隣の女性とぶつかりそうになり、反射的に「すみません!」と直立する。
完璧な仮面、早速ひびが入る。
……落ち着け、私。今日は「ふんわり系」のはずだ。
感情より戦略を優先するのが私の生存術のはずなのに、緊張すると地が出る。それが、長年の悩みだった。