社長、その溺愛は計算外です
「もしもし、新谷です」
『新谷さん。まだ作業中ですか?』
桐原さんの声が、スマホから流れてくる。深夜だからか、いつもより柔らかく、親密に響く。
「桐原さん! はい、もう少しで完成しそうです」
『お一人で?』
その一言に込められた心配が、目頭を熱くした。
「はい。チームのみんなには、帰ってもらいました」
『……そうですか』
少し躊躇うような間があった。
『自社のモジュールが関係する以上、最後まで確認する義務があります』
いつもの、合理的な声。
『……もっとも、それだけが理由ではありませんが』
「え……?」
『オンラインで、確認のお手伝いをしますよ。あの認証システムは、設計に関わった僕が見た方が早い』
「でも、もうこんな時間ですし……」
『構いません。気になって、眠れませんから』
短く、それだけ言った。
彼の申し出に、静かな温もりが広がった。
「ありがとうございます。実は、最終チェックで少し不安な部分がありまして……」
『分かりました。今から一緒に確認しましょう』