社長、その溺愛は計算外です

『カフェ・ソレイユ』は、オフィス街の中にある小さなフレンチカフェだった。

落ち着いたベージュの外観に、手書きの看板が温かみを添えている。

ドアを開けると、焼きたてのパンの香ばしさが漂ってきた。

「新谷様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

名前を告げて案内されたのは、窓際の落ち着いた席だった。朝日が差し込む、気持ちの良い場所。

テーブルの上に、小さなカードが置かれていた。

手書きの、くせのある文字。

【ゆっくり休んでください。──圭佑】

それだけが、書かれていた。

たった一行。なのに、その短さがかえって胸に刺さった。

「圭佑」という字を、人差し指でそっとなぞる。

会議室でも、廊下でも、深夜の通話でも見せたことのない、この人の柔らかな部分が、この二文字に凝縮されているような気がした。

「お待たせいたしました」

店員が運んできたのは、温かな湯気を立てるモーニングセットだった。

琥珀色に透き通ったコンソメスープ、ふわふわとしたスフレオムレツ、香ばしい白パンと季節のフルーツ。

体が温まるものと、胃にやさしいものが、丁寧に選ばれていた。

「桐原様から、『消化に良いものを中心に』とご指定がございました」

コンソメスープを口に運ぶ。

「……おいしい」

思わず声が漏れた。

嬉しくて、温かくて、そして少し切なくて。こんなに自然に気遣われると、どうかなってしまいそうだ。

私はスマホを取り出し、返信する。
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