社長、その溺愛は計算外です

「君といると、素の自分でいられるって」

私は今度こそ、その言葉をちゃんと受け止めた。

この人にも、そういう場所が必要だったのかもしれない。

そして、もし私がその場所になれているのだとしたら──それは、何よりも嬉しいことだと思った。

「おやすみなさい、梓さん」

「おやすみなさい、圭佑さん」

改札を通りながら、私は一度だけ振り返った。

彼はまだそこに立って、こちらを見ていた。

ホームへ向かう階段を降りながら、自分の中で何かが静かに確定していくのを感じた。

弱みを見せたのに、怖くなかった。ぶつかったのに、嫌じゃなかった。

それはきっと──あの人だから、だ。



電車の揺れに身を任せながら、私はスマホを取り出した。

画面を開いて、迷わず名前をタップする。学生時代からの親友、望月(もちづき)春菜(はるな)

就職してからも変わらず、私の本音を全部受け止めてくれる、唯一の友人だ。

【今日ね、仕事相手に偶然会って、そのままお酒を飲んだ】

送信から三秒も経たないうちに、既読がつく。

【え、何それ! 誰!?】

続けて【詳しく!!】とスタンプ付きで届いた。相変わらずのリアクションに、思わず笑ってしまう。
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