社長、その溺愛は計算外です
「君といると、素の自分でいられるって」
私は今度こそ、その言葉をちゃんと受け止めた。
この人にも、そういう場所が必要だったのかもしれない。
そして、もし私がその場所になれているのだとしたら──それは、何よりも嬉しいことだと思った。
「おやすみなさい、梓さん」
「おやすみなさい、圭佑さん」
改札を通りながら、私は一度だけ振り返った。
彼はまだそこに立って、こちらを見ていた。
ホームへ向かう階段を降りながら、自分の中で何かが静かに確定していくのを感じた。
弱みを見せたのに、怖くなかった。ぶつかったのに、嫌じゃなかった。
それはきっと──あの人だから、だ。
◇
電車の揺れに身を任せながら、私はスマホを取り出した。
画面を開いて、迷わず名前をタップする。学生時代からの親友、望月春菜。
就職してからも変わらず、私の本音を全部受け止めてくれる、唯一の友人だ。
【今日ね、仕事相手に偶然会って、そのままお酒を飲んだ】
送信から三秒も経たないうちに、既読がつく。
【え、何それ! 誰!?】
続けて【詳しく!!】とスタンプ付きで届いた。相変わらずのリアクションに、思わず笑ってしまう。