社長、その溺愛は計算外です
【クライアントの社長。IT系の】
【……ちょっと待って。あの婚活パーティーで梓が一番避けてた人じゃないの? 笑】
【なんで知ってるの】
【先週、梓が「最悪なことがあった」って言ってたじゃん。あれでしょ、絶対】
【……まあ、そう。それで、土曜日に会うことになった】
しばらく間があって、届いたのは一言だった。
【梓、それデートじゃん】
電車の中で、私は小さく息を吐いた。
そうかもしれない。それでも今は、その言葉を自分の中で認めることよりも、もっと確かなことがあった。
弱みを見せても、壊れなかった。ぶつかっても、終わらなかった。
今まで、それができる相手がいなかった。
その時、別の通知が届いた。
『桐原圭佑』
【今日は、本当に楽しかったです。
土曜日、楽しみにしています。
君だけに見せたい場所があるんです。
圭佑】
私は画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。
『君だけに見せたい場所』
──また、偶然じゃないのかもしれない。
書店で偶然会ったと思っていた。この人は「気づいたらここに入っていた」と言った。
計画通りにいかないことを楽しめない人が。
その言葉の続きを、早く知りたかった。
これが計算ではなく、ただの「私」の気持ちだと──もう、疑いようがなかった。