社長、その溺愛は計算外です

第4話 君だけに、見せたい場所


土曜日の朝。

カーテンを開けた瞬間、抜けるような青空が視界いっぱいに広がった。

窓を開けると、爽やかな風が部屋に流れ込んでくる。どこかで金木犀の香りがする。秋の香りだ。

時計を見ると、午前八時。待ち合わせは午前十一時だから、まだ三時間ある。

それなのに、私の心臓はもう落ち着きを失っていた。

クローゼットを開けて、服を選び始めた。

婚活パーティーで着た、パステルピンクのワンピースは──仮面を貼り付けていたあの日を思い出してしまう。

スマホを手に取り、春菜にメッセージを送った。

【今日、何着ていけばいいと思う?】

すぐに返信が来た。

【梓らしくいればいいのよ! 彼は、本当のあなたを見たいんだから】

そうだ。圭佑さんは、ありのままの私を受け入れてくれた。だから今日は──本当の私でいよう。

最終的に選んだのは、淡いブルーグレーのニットワンピースと、歩きやすいスエードのローヒールブーツ。髪は緩くまとめ、後れ毛を少し残す。メイクは控えめに。

鏡を見て、小さく頷いた。これが、私だ。

バッグに財布とスマホを入れながら、天気予報をさっと確認する。

『午後から雨の可能性』という文字が目に入った。

それでも、あんなに晴れている。

予報より、目の前の空を信じることにした私は、傘を手に取らないまま家を出た。

この判断が、今日という日をあんなふうに変えてしまうなんて。

この時の私は、まだ知る由もなかった。
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