社長、その溺愛は計算外です
「……僕は、どうしてもこれだけは」
「パクチー、苦手なんですか?」
「天敵です」
あんなに完璧だった人が、今は毒でも盛られたかのように固まっている。そのギャップが可笑しくて、私は思わず吹き出した。
「何か、作戦はありますか?」
「……皿ごと交換をお願いしようかと」
「ふふ。そこまでするんですね」
「笑わないでください」
耳まで赤くして、まったく大真面目な顔で訴えてくる圭佑さん。
「良ければ、私が食べましょうか? 私、大好きなんです」
「本当に?」
私は笑いながら、ひょいと彼の皿からパクチーを奪った。
圭佑さんは、心底救われたような顔で私を見た。
「……助かりました。データ通り、梓さんは有能です」
「大げさですよ」
「事実です」
耳まで赤いまま、大真面目に言い切る。笑い合うと、それまでの緊張が一気に溶けた。
「梓さんの前だと、格好がつかない」
彼は苦笑しながらも、どこか嬉しそうに私を見た。
「君には……僕の格好悪いところも、知っていてほしいんだ」
「私も。あなたには、完璧じゃない私を知っていてほしいです」
似たような願いを口にしたことが可笑しくて、私たちはどちらからともなく小さく笑い合った。