社長、その溺愛は計算外です

「すごい。やっぱり、分かるんだな」

圭佑さんが、ゴールドを見ながら静かに言った。

「こいつは……正直なので」

穏やかな、けれど確信に満ちた声。

ゴールドが私に懐いたことが、まるで彼自身が私を受け入れたことの証明であるかのように響いて。

急に顔が熱くなって、私は慌ててほうじ茶を口に含んだ。

香ばしい香りが喉を通り抜けるけれど、騒ぐ心臓の音は一向に静まってくれなかった。



三人でしばらくゆっくり過ごした後、圭佑さんがキッチンで夕飯の準備を始めた。

「手伝いましょうか?」

「大丈夫です。梓さんは、ゆっくりしていてください」

「でも……」

「遠慮しないで」

私はリビングのソファに腰を下ろし、ゴールドの背中に手を置いた。

キッチンから、包丁の音とフライパンの音が聞こえてくる。

圭佑さんが、料理をしている。一人で。

この人は、一人でいる時間が長いのかもしれない──そんな直感が、ふと頭をよぎった。

仕事の場で何百人もの前に立ちながら、この部屋では誰もいないキッチンに立ってきたのだろうか。

そう思ったら、包丁の音が少し違って聞こえた。

「できました」
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