社長、その溺愛は計算外です

私は画面を見つめたまま、呼び出し音が終わるのを待った。

ごめんなさい。

声に出さないまま、心の中でだけ、そう言った。



午後三時を回った頃、内線電話が鳴った。

『新谷さん、面会の方がいらっしゃっているそうです』

「どちら様ですか?」

『水沢麗華様、とのことです』

私の手が止まった。

どうして、彼女が私に?

「今すぐ伺います」

エレベーターで一階に降りて、受付に向かうと──彼女が立っていた。

あの日のレストランにいた女性が、今は目の前に立っている。

高級ブランドのツイードスーツに真珠のアクセサリー。そして、左手の薬指には大粒のダイヤモンドが輝く指輪。

私が貸してもらったお姉さんのニットよりも、もっと重く、決定的な「繋がり」を誇示するように、それは冷たく光を跳ね返していた。

「新谷梓さんですね。初めまして。水沢麗華と申します」

彼女の声は澄んだソプラノで、格調高い響きを持っていた。

こうして間近で向き合うと、背筋が自然と伸びる。

「は、初めまして……新谷梓です」

「突然お伺いして、申し訳ございません。少しお話があるのですが、お時間をいただけますでしょうか」
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