社長、その溺愛は計算外です
私は画面を見つめたまま、呼び出し音が終わるのを待った。
ごめんなさい。
声に出さないまま、心の中でだけ、そう言った。
◇
午後三時を回った頃、内線電話が鳴った。
『新谷さん、面会の方がいらっしゃっているそうです』
「どちら様ですか?」
『水沢麗華様、とのことです』
私の手が止まった。
どうして、彼女が私に?
「今すぐ伺います」
エレベーターで一階に降りて、受付に向かうと──彼女が立っていた。
あの日のレストランにいた女性が、今は目の前に立っている。
高級ブランドのツイードスーツに真珠のアクセサリー。そして、左手の薬指には大粒のダイヤモンドが輝く指輪。
私が貸してもらったお姉さんのニットよりも、もっと重く、決定的な「繋がり」を誇示するように、それは冷たく光を跳ね返していた。
「新谷梓さんですね。初めまして。水沢麗華と申します」
彼女の声は澄んだソプラノで、格調高い響きを持っていた。
こうして間近で向き合うと、背筋が自然と伸びる。
「は、初めまして……新谷梓です」
「突然お伺いして、申し訳ございません。少しお話があるのですが、お時間をいただけますでしょうか」