社長、その溺愛は計算外です
彼女が去ったあとの空気には、凛とした香水の残り香と、私には到底太刀打ちできない『正妻』としての品格が漂っていた。
一人残された私は、冷めた紅茶のカップを見つめていた。
桐原会長が動いている。十二月第一週まで、二ヶ月もない。
計算しようとした。でも、計算が立たなかった。
なぜ、計算できないのだろう。
代わりに浮かんできたのは──雨の中の、あの肩だった。
私だけを庇い続けた、あの腕。
答えより先にあの景色が浮かんだ瞬間、自分の気持ちの深さを、私は初めてちゃんと知った。
ああ、私は……あの人のことが、好きなんだ。
だから、こんなに痛い。
分かってしまったからこそ、余計に怒りが湧いてくる。
どうして、こんな大切なことを教えてくれなかったの、圭佑さん……。