没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
少しの沈黙。

その間に、心臓の音だけがやけに大きく響く。

そして――その一言で、すべてを悟る。

「すまぬが。皇太子妃は、王家か公爵家と決まっている」

淡々とした声音。

まるで、最初から決まっていたことを確認するだけのように。

「婚約は、破棄になる」

(……やっぱり)

分かっていた。分かっていたはずなのに。

胸の奥が、ひどく痛む。

「……はい」

それでも私は、頷くことしかできなかった。

泣いてはいけない。縋ってはいけない。

それは、許されないことだから。

殿下は、何も言わない。

ただ、静かにこちらを見ている。

その視線の意味を、私はもう知ることはできない。

「セレスティア」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

その瞬間。

殿下の手が、そっと私の頬に触れた。

(……え……)
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