没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています

第2章 聖女覚醒

町のはずれにある、小さな屋敷。

かつてのヴァルディア家とは比べものにならないほど質素なその場所が、今の私の居場所だった。

朝になると、私は簡素な外套を羽織り、表へ出る。

門の前には、今日もすでに人が並んでいた。

「セレス様、今日は腰を……」

「順番に診ますから、大丈夫ですよ」

そう声をかけながら、私は一人ひとりを中へ案内する。

部屋の中央に置いた椅子に座ってもらい、そっと手を当てる。

「腰ですね。ここに座って下さい」

ゆっくりと、呼吸を合わせるように。

相手の痛みをなぞるように、意識を集中させる。

――すると、じんわりとした温もりが手のひらに広がっていく。

「……ああ……楽になっていく……」

目の前の男性の表情が、みるみるうちに和らいでいく。

さっきまで苦しそうだった顔が、ほっと緩む瞬間が好きだった。

(よかった……)
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