没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
胸の奥に、静かな安堵が広がる。

「これで大丈夫です。無理はなさらないでくださいね」

そう言って手を離すと、男性は何度も頭を下げた。

「本当に助かりました……!」

「いえ」

私は小さく微笑み、告げる。

「お代は、10ゴールドになります」

「はいよ」

迷いなく差し出される金貨。

10ゴールドは、決して安くはない。

普通の治療院に行けば、もっと安く済む場合もある。

それでも――

「ここに来れば治るって、本当だったな……」

そう言って帰っていく背中を見送るたび、私は少しだけ胸が締めつけられる。

次の人が入ってくる。

今度は若い女性だった。

顔色が悪く、足取りもおぼつかない。

「……大丈夫ですか?」

「すみません……熱が下がらなくて……」

額に手を当てると、はっきりと分かるほど高い熱。

「病院には……行けなくて……」
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