没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
異変に気づいたのは、数日後のことだった。

「セレス様……水が……」

朝、屋敷の門を叩く音に外へ出ると、そこには顔色の悪い男が立っていた。

手には、空になった水瓶。

「どうしましたか?」

問いかけると、男は震える声で言う。

「井戸が……枯れたんです」

「……え?」

思わず言葉を失う。

この町にとって、水は命だ。

井戸が枯れるなど、あり得ないことだった。

「昨日までは普通だったのに……今朝になったら、どの井戸も水が出なくて……」

ざわり、と胸の奥が騒ぐ。

「……案内して下さい」

私は外套を羽織り、男の後を追った。

町の中央にある井戸の周りには、すでに人だかりができていた。

皆、不安げな表情で井戸の中を覗き込んでいる。

「本当に出ないのか……?」

「さっきから何度やっても空だ……」
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