没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
周囲の人々もざわめく。けれど私は、ただ困ったように微笑むしかない。

「そんな、大げさなものではありません」

“女神”なんて、そんな立派なものじゃない。

ただ、困っている人を放っておけないだけ。

――祖母に、そう教えられてきたから。

けれど、その呼び名はもう王都中に広まってしまっていた。

そして私は――この国の皇太子、アルセイド・クロヴィス殿下の婚約者でもある。

「セレスティア」

低く、静かな声が背後から響いた。

振り返ると、そこに立っていたのは、黒髪に鋭い瞳を持つ青年。

誰もが畏れる、この国の皇太子。

「殿下」

私はスカートの裾を摘まみ、静かに礼をする。

冷たく、無駄のない人。

それが、アルセイド殿下の印象だった。

婚約者でありながら、交わす言葉は必要最低限。
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