没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
やがて。ぽたり、と。

井戸の底から、小さな水音が響いた。

「……水が……!」

誰かが叫ぶ。

次の瞬間、透明な水がゆっくりと湧き上がってくる。

「出た……!水だ……!」

歓声が上がる。

人々の顔に、安堵と喜びが広がっていく。

「セレス様……!」

「本当に、女神様だ……!」

その声を聞きながら、私はそっと手を離した。

視界が、わずかに揺れる。

(……少し、疲れただけ)

そう自分に言い聞かせる。

けれど、胸の奥に残るこの重さは――今までとは、どこか違っていた。

最初の井戸を浄化したその日、私は屋敷に戻るなり、ほとんど倒れ込むように眠りについた。

体が重い。

まるで自分の中の何かを削り取られたような、そんな感覚。

(……少し、疲れただけ)
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