没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
そう思おうとしたけれど、まぶたを閉じた瞬間、意識は深く沈んでいった。

次に目を覚ました時には、すでに日が高く昇っていた。

「セレス様……!」

扉の外から、焦った声が響く。

「別の井戸も、同じように水が出なくなって……!」

(……やっぱり)

ゆっくりと体を起こす。

まだ少しだけ重いけれど、動けないほどではない。

「分かりました。すぐに行きます」

外套を羽織り、屋敷を出る。

町の空気は、昨日よりもさらに張り詰めていた。

案内された井戸の周りには、すでに多くの人が集まっている。

「セレス様なら、きっと……」

「お願いだ……水を……」

期待と不安が入り混じった視線が、一斉に私へ向けられる。

(……やるしかない)

私は井戸の縁に手を置き、ゆっくりと目を閉じた。

昨日と同じ、黒い穢れの気配。
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