没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
それに向けて、意識を集中させる。

手のひらから光を流し込むと、すぐにあの焼けるような感覚が戻ってきた。

(……っ)

歯を食いしばる。痛い。重い。でも――

(この人たちのために)

光を、押し込む。

穢れが、じりじりと削れていく。

やがて、ぽたり、と水音が響いた。

「……出た……!」

「水が戻った……!」

歓声が上がる。

その声を遠くに聞きながら、私はそっと手を離した。

(……大丈夫)

まだ、できる。

その日、私は三つの井戸を浄化した。

そして屋敷に戻ると、また何もできないまま眠りに落ちる。

翌日も、そのまた翌日も。

呼ばれれば向かい、穢れを祓い、倒れるように眠る。

まるで――それしかできないかのように。

(……これで、いい)

誰かが助かるなら、それでいい。
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