没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
低く、威圧的な声。

「……はい」

私は立ち上がり、静かに答える。

騎士の一人が一歩前に出ると、冷たい視線で私を見据えた。

「王命により、お前の身柄を拘束する」

「……え……?」

言葉の意味を、すぐには理解できなかった。

拘束――?

「町の井戸を浄化したと聞いている。その力について、詳しく調べる必要がある」

感情のない声が、淡々と告げる。

「ですが、私は――」

言いかけた言葉は、途中で遮られた。

「抵抗は無用だ」

短く言い放たれる。その一言で、すべてが決まってしまった。

(……連れて行かれる)

胸の奥が、ひやりと冷える。

「少し、支度を――」

そう言いかけた私に、騎士は首を横に振った。

「不要だ。すぐに出る」

拒絶の余地は、ない。

私はゆっくりと息を吸い、そして小さく頷いた。
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