没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
「……分かりました」

屋敷を出ると、外には馬車が待っていた。

重々しい造りのそれは、まるで罪人を運ぶためのようで。

(どうして……)

ただ、人を助けただけなのに。

それなのに、どうしてこんなことに――

問いは胸の中で渦巻くけれど、答えはどこにもない。

私は何も言わず、馬車へと乗り込む。

扉が閉められる音が、やけに大きく響いた。

揺れ始めた馬車の中で、私はただ静かに手を握りしめる。

(……大丈夫)

そう、自分に言い聞かせる。

何も悪いことはしていない。だからきっと――

そう思いたいのに。

胸の奥に広がるこの不安だけは、消えてくれなかった。

宮殿の大広間は、静まり返っていた。

高い天井。重厚な柱。

その中央に立たされている自分が、まるで別の世界にいるように感じる。

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