没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
(どうして……こんな場所に……)

私はただ、町の人を助けていただけなのに。

「――報告は以上か」

玉座の上から、低く響く声。

視線を上げると、そこには国王陛下が座していた。

その隣には王妃、そして周囲には重臣たちが並んでいる。

「はっ」

騎士が一歩進み出る。

「町に広がった穢土は、すべてこの者が浄化しました。確認済みです」

ざわり、と空気が揺れる。

「浄化の力……」

「しかも、その髪……」

「間違いない……」

小さく囁かれる声が、耳に届く。

(……髪?)

無意識に、自分の髪に触れる。

ミルクティーベージュだったはずの髪は、いつの間にか――ほんのりと、白く光を帯びていた。

「祖母も聖女であったな」

別の声が続く。

「血筋も、力も、十分だ」
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