没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
次々に重ねられる言葉に、胸がざわつく。

(聖女……?)

そんなはず、ない。

私はただ、少し人より力があるだけで――

「セレスティア・フォン・ヴァルディア」

国王陛下に名を呼ばれ、はっと顔を上げる。

鋭く、まっすぐな視線が、私を射抜く。

「そなたの力、この国に必要なものだ」

静かに、だがはっきりと告げられる。

「そなたを、この国の聖女と認める」

――その一言で。世界が、音を失った。

(……え……)

理解が追いつかない。

聖女?私が?

「前へ」

促されるまま、一歩、また一歩と進む。

足元が、どこか不安定に感じる。

そして――目の前に、差し出されたものがあった。

それは、小さくも精巧なティアラ。

白く輝く宝石が埋め込まれ、神聖な光を放っている。

「聖女の証だ」
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