没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
けれど――

「では、早速だ」

国王は迷いなく続けた。

「国土に広がる穢土を、浄化してほしい」

その一言で、空気が引き締まる。

「各地で穢れが確認されている。このまま放置すれば、やがて国そのものを蝕むだろう」

静かな声だったが、その内容は重い。

(……やっぱり)

町だけではなかったのだ。

あの穢れは、もっと広く、深く広がっている。

「それは、聖女にしかできないことだ」

その言葉に、胸がわずかに揺れる。

(私にしか、できない……)

逃げ場はない。

それを、はっきりと突きつけられる。

「……分かりました」

私は、ゆっくりと息を吸い込む。

迷いがないわけではない。

不安が消えたわけでもない。

それでも――はっきりと告げる。

「浄化の旅に、出ます」

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