没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
その瞬間、重臣たちの間に小さなどよめきが広がった。

「よろしい」

国王は頷く。

「すぐに準備を整えさせよう。聖女の任務として、各地を巡ってもらう」

その言葉を聞きながら、私は静かに目を伏せる。

(旅……)

この宮殿を出て、再び外へ。

それは、少しだけ救いにも感じた。

閉じ込められたままではない。

自分の足で、人を救いに行ける。

けれど同時に――

(私は、もう“ただの私”じゃない)

聖女として見られ、聖女として働く。

その重さが、胸にのしかかる。

「覚悟はあるか」

国王の問いが、静かに落ちる。

私は顔を上げ、まっすぐに答えた。

「……はい」

迷いを押し込めるように。

「必ず、浄化を成し遂げます」

それが、自分にできることだから。

それが――今の私の、役目だから。

その言葉と共に、私の運命は静かに動き出した。
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