没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
「その……今回の任務について、なのですが」

無難な話題を選ぶ。

「穢土は、各地に広がっているのでしょうか」

「……ああ」

それだけ。

(……やっぱり)

会話が、続かない。

「えっと……」

言葉を探す。

「危険、なのでしょうか……」

「……魔物が出る可能性は高い」

簡潔な答え。それ以上の説明はない。

「そう、ですか……」

また沈黙が落ちる。

(……どうしよう)

気を遣っているつもりなのに、うまくいかない。

むしろ、空気が余計にぎこちなくなっている気がする。

ふと、視線を逸らし、窓の外を見る。

流れていく景色。

見慣れたはずの王都が、少しずつ遠ざかっていく。

(……こうして、旅に出るなんて)

少し前の自分には、想像もできなかった。
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