没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
皇太子の婚約者には、週に一度――宮殿での面会が許されている。

決まりきったように、私はその日、花園へと足を運ぶ。

色とりどりの花が咲き誇るその場所は、王都でも特に美しいとされる庭園だ。

そして、そこに必ず現れる人がいる。

「……来たか」

低く、抑えた声。

振り向けば、アルセイド殿下がいつものように立っていた。

「殿下。本日も、お時間をいただきありがとうございます」

私は丁寧に一礼する。

けれど、返ってくる言葉は少ない。

「……構わない」

それだけ。会話は、そこで途切れる。

しばらく沈黙が流れる中、殿下は花園へと視線を向けた。

風に揺れる花々。淡く香る春の匂い。

「……綺麗だな」

ぽつりと、そう呟く。

「あ、は、はい……とても」
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