没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
旅が始まって数日。

馬車の中では相変わらず会話は少なかったけれど、外に出れば、少しだけ空気が変わることに気づいた。

「……飲め」

差し出されたのは、水筒だった。

「え……」

突然のことに戸惑う私をよそに、殿下はそれ以上何も言わない。

「……ありがとうございます」

受け取って口をつけると、冷たい水が喉を通っていく。

思っていた以上に喉が渇いていたことに気づく。

(……どうして分かったの……?)

視線を上げると、殿下はすでに別の方向を見ていた。

まるで、それが当然のことのように。

――それは、休憩の時も同じだった。

街道の脇で馬を休ませている間、私は少し離れた場所に腰を下ろす。

ふと足元を見ると、小さな白い花が咲いていた。

(綺麗……)

そう思っていると、目の前に影が落ちる。
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