没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
その体温が、はっきりと伝わってくる。

「……怖かったな」

耳元で落とされた声は、あまりにも優しくて。

(……どうして……)

胸の奥が、強く揺れる。

守られている。こんなにも、近くで。

こんなにも、確かに。

(……好き……)

気づいた瞬間、心臓が大きく跳ねた。

押し込めていたはずの想いが、溢れてくる。

(私は……)

視線を上げると、殿下の真剣な横顔があった。

魔物を警戒しながらも、私を庇うその姿。

冷たく突き放されたはずなのに。

もう終わったはずなのに。

(……今でも)

この人が、好き。

その想いだけが、はっきりと胸に残っていた。
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