没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
その問いに、言葉が詰まる。

けれど、もう隠せなかった。

胸の奥に押し込めていた想いが、溢れてくる。

「……好き、だからです」

震える声で、それでもはっきりと告げる。

「あなたのことが……好きなんです」

抱きしめられている腕が、さらに強くなる。

「セレスティア……」

かすれた声で名前を呼ばれる。

「忘れようとしても……忘れられません……」

自分でも、止められなかった。

どれだけ距離を置こうとしても、どれだけ終わったと言い聞かせても。

この想いだけは、消えなかった。

「……忘れるな」

すぐに返ってきた言葉。

「そんなもの、忘れる必要はない」

その声音には、はっきりとした熱が宿っていた。

次の瞬間、唇が、そっと触れる。

(……あ……)

やわらかく、優しい口づけ。

けれどそこに込められた想いは、あまりにも強くて。
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