没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
胸に耳を当てると、規則正しい鼓動が聞こえる。

その音に包まれていると、すべてを委ねてしまいたくなる。

「……セレス」

名前を呼ばれ、少しだけ顔を上げる。

視線が絡む。それだけで、胸が締めつけられる。

「……俺の側を離れるな」

ぽつりと落とされたその言葉。

まるで、それ以外は許さないとでも言うように。

(……どうして……)

こんなにも、求められているの。

触れられて、抱きしめられて。

寝ても覚めても、ずっと一緒。

距離なんて、もうどこにもない。

(……私、どうなってしまうの……)

戸惑いながらも。

その温もりに、抗えない自分がいた。

それは、浄化の最中にも現れていた。

「……側にいるから安心しろ」

穢土に手をかざす私のすぐ後ろで、アルセイド殿下の声が落ちる。
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