没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
「……以上の理由により」

静まり返った謁見の間で、管理官の声が冷たく響く。

「セレスティア・フォン・ヴァルディアを、聖女の任より解く」

その言葉は、あまりにもあっさりと告げられた。

(……やっぱり……)

分かっていた。力が弱まった時点で、こうなることは。

「聖女の証は返還せよ」

差し出された箱の中に、私はそっとティアラを置く。

あれほど重く感じたそれが、今はやけに軽かった。

「……今後は、宮殿を去るように」

それだけだった。責める言葉も、慰めもない。

ただ――役目を終えた存在として扱われるだけ。

(……終わった……)

静かに一礼し、私はその場を後にした。

振り返らない。

振り返ってしまえば、何かが崩れてしまいそうだったから。

――そして再び訪れたのは、かつての屋敷。
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