没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
殿下が深く頭を下げる。

その横顔は、初めて見るほどに穏やかだった。

――そして。

数日後。私は、再びあの場所に立っていた。

宮廷にある花園。かつて、何度も殿下と過ごした場所。

「……覚えているか」

隣に立つ殿下が、静かに言う。

「……はい」

ここで交わした、少ない言葉。

けれど、忘れたことは一度もなかった。

「ここで、もう一度言う」

殿下が、ゆっくりとこちらを向く。

その瞳には、迷いはなかった。

「セレスティア」

名前を呼ばれる。

胸が、強く打つ。

「俺の妃になってくれ」

まっすぐな言葉。飾りも、遠回しもない。

ただ――真実だけ。

(……殿下……)

目の奥が、少しだけ熱くなる。

こんな未来が来るなんて、思ってもいなかった。
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