没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
けれど今は、“皇太子妃”としての証。

(……ここまで、来たんだ……)

没落し、すべてを失ったあの日から。

聖女として選ばれ、そして役目を終えた日まで。

いくつもの出来事が、胸をよぎる。

そのすべてを越えて、今ここに立っている。

「お時間です」

扉が開かれる。

私はゆっくりと立ち上がり、一歩を踏み出す。

大聖堂へと続く長い通路。

その先には、多くの人々が待っている。

扉が開かれた瞬間――祝福のざわめきが広がった。

視線の先。

そこに立っているのは――アルセイド殿下。

正装に身を包み、まっすぐにこちらを見ている。

その瞳に、迷いはない。

(……殿下……)

一歩ずつ、歩み寄る。
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