Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
「逃げ腰が速いやつだ、よし捕まえてや…うぐ」
次の瞬間、髭の怪人の巨体が、スローモーションのように宙に浮いた。
蒼の、目にも留まらぬ速さの蹴りが、男の顎に突き刺さっていた。
ドサッ!!!!
地響きと共に大きな土埃が舞って、怪人は動かなくなった。
何が起きたのか、全然分からない。
「ヤバいぞ、あいつ……本気だ!」
「番人相手じゃ無理だっ!」
周囲が、今度は恐怖に騒めく。
蒼は、怪人が倒れた場所から十メートルも離れた場所に、何事もなかったかのように立っていた。
その瞳は、冷徹な水色に輝いている。
そして、
「うわっ」
瞬きする間に、私は蒼に抱き抱えられていた。
重力から解放され、風と一緒に飛び上がる。
さっきまで私たちを殺そうとしていた異形の人混みが、豆粒のように小さくなっていく。
人間じゃ、ない────
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