Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
「ひぇ」
気付けば街も小さく見え始めて、空高く上がり続けていた。
「うるさい」
彼は軽蔑するかのような冷たい目で、チラッと私を見る。
「こ、怖い」
「文句言うな」
街から遠ざかり、山の中にゆっくりと降り立った。
周りに人は居ない。
見渡す限り、高い木々に覆われている。
私は突然の事に頭が追いつかず、激しい動悸がして、ゼーハーと肩で大きく呼吸を繰り返した。
怖かった……────
「……名前、聞いてなかったな」
彼も疲れた様子で、木にもたれながら座る。
「……あさひな、つむぎ」
「俺は……そっちの言葉で言うなら、蒼(あおい)だ」
「あおい……」
ふっと、彼の呼吸が乱れる。
「……はぁ……」
今まで見せなかった、わずかな息切れ。
「……大丈夫?」
思わず聞くと、蒼は一瞬だけ眉を寄せた。
「……さすがに、人を背負って……飛んだ事は、ないから、な」
「なんで助けてくれたの?」
ぽつりと問いかける。
蒼はしばらく黙ったまま、視線を遠くに向けていた。
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