Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
「……別に」
短く、それだけ。
素っ気ない言い方。
でも、さっきの光景が頭から離れない。
あの速さ、あの強さ。
そして、私を庇った背中……
「……ここも、そう長くは居られない」
「蒼もこの世界の人も、人間じゃ…ない、の?」
蒼はゆっくりと立ち上がった。
私はまだ地面に膝をついたまま、彼を見た。
「……あぁ。見た目はそんなに変わらないけどな」
どういう事?
聞きたいことはたくさんあるのに、キィイイっと頭の奥をかき鳴らすような耳鳴りがして、言葉を飲み込む。
風が不自然に揺れた。
いや、揺れたのではない。
空気が、ねじれたのだ。
「……来たか」
蒼の声が、一気に低くなる。
さっきまでの静寂が、嘘のように一瞬で張り詰めた。
「え……」
バチッ、バチチッ────!!
鼓膜を刺すような、静電気の弾ける音。
目の前の空間が、まるで熱せられた飴細工のようにぐにゃりと歪んだ。
「なに……こ、れ」
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